買い戻された女の安息と神の栄光


武井達郎兄

(吉祥寺学び会、2013/08/20)

引用聖句:ルツ記1章1節-5節
1さばきつかさが治めていたころ、この地にききんがあった。それで、ユダのベツレヘムの人が妻とふたりの息子を連れてモアブの野へ行き、そこに滞在することにした。
2その人の名はエリメレク。妻の名はナオミ。ふたりの息子の名はマフロンとキルヨン。彼らはユダのベツレヘムの出のエフラテ人であった。彼らがモアブの野へ行き、そこにとどまっているとき、
3ナオミの夫エリメレクは死に、彼女とふたりの息子があとに残された。
4ふたりの息子はモアブの女を妻に迎えた。ひとりの名はオルパで、もうひとりの名はルツであった。こうして、彼らは約十年の間、そこに住んでいた。
5しかし、マフロンとキルヨンのふたりもまた死んだ。こうしてナオミはふたりの子どもと夫に先立たれてしまった。

今日は、ルツがどう生きたかと神の救いのご計画について、少し学んでみたいと思います。
今、御代田キャンプでは、熱いメッセージが連日語られて、非常にリッチです。
そこで今日は、この熱い東京では、神の遠大な救いのご計画の歴史の一こまを、ルツ記を通して学びながら、一服の清涼剤にしていただければと願っています。

満天の夜空の無数の星の一つであるような小さな私たちが、神の御業である広大な宇宙の中に組み込まれているように、私たちも遠大な神の救いのご計画の中に、組み込まれているんだと思う時、何とも言えない喜びが湧いてこないでしょうか。
私たちは、神の救いの計画の中に定められているのです。

エペソ人への手紙1:4
4すなわち、神は私たちを世界の基の置かれる前からキリストのうちに選び、御前で聖く、傷のない者にしようとされました。

さて、ルツ記はというよりも、ルツは多くの人から愛されています。それはルツの一途な神に対する愛と、また姑との互いの愛が、読む者に何か暖かいものを感じさせるからではないでしょうか。
そしてそれはさらに、苦難の境遇の中でも勤勉で素直に、また誠実に生きる姿を見るからではないでしょうか。そして、彼女はしっかり者でした。
そしてルツは、常にその苦難の境遇の中から、買戻しの権利のある贖い主ボアズと出会い、すばらしい結婚へと導かれ、安息と神の栄光、救いの計画に入れられていったのです。

そしてこのルツ記には、先に触れました遠大な神の救いのご計画の遂行の歴史の一こまを見ることができるのです。一人の異邦の女ルツが、この神の救いの計画の一こまに組み込まれていく様子が記されています。今日はその歴史の一こまを見てみたいと思います。
そこで、最初に今日出て来る主人公であるルツとボアズとイエス様の関係を見ておきたいと思います。
それは、最初に読んだ人が戸惑いを覚える、永延と記された系図の書いてあるマタイの福音書1章の出だしであります。

マタイの福音書1:1-6
1アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。
2アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれ、
3ユダに、タマルによってパレスとザラが生まれ、パレスにエスロンが生まれ、エスロンにアラムが生まれ、
4アラムにアミナダブが生まれ、アミナダブにナアソンが生まれ、ナアソンにサルモンが生まれ、
5サルモンに、ラハブによってボアズが生まれ、ボアズに、ルツによってオベデが生まれ、オベデにエッサイが生まれ、
6エッサイにダビデ王が生まれた。

マタイの福音書1:16-17
16ヤコブにマリヤの夫ヨセフが生まれた。キリストと呼ばれるイエスはこのマリヤからお生まれになった。
17それで、アブラハムからダビデまでの代が全部で十四代、ダビデからバビロン移住までが十四代、バビロン移住からキリストまでが十四代になる。

このように、ルツとボアズとイエス様との系図が書かれております。ではここで、まずエリメレクの家族の苦難を見てみましょう。

■モアブへの移住
家長のエリメレクは、真の神の民でありました。真の神に導かれて、エジプトから脱出したエジプトの民の子孫でした。しかし、彼は神の約束を忘れたのか、自覚がないのか解からないのですが、ユダの地に飢饉が起こるとすぐ妻のナオミと2人の息子を連れて、異邦の民の地であるモアブに移住したとあります。
神の約束による留まるべき所に留まらず、自分の判断で行動を起こしました。10年の苦難の日々、その後彼の家族は、モアブの地に20年留まるわけですが、それは悲しい年月でした。
まずナオミの夫エリメレクは死にました。次に異邦人であるモアブの女と結婚した二人の息子が、二人とも死にました。もともとモアブ人は、律法によりイスラエル人の領土から追い出されたのです。このあたりのことは、申命記23章に書いてありますのでお読みください。

つまり、行くべき所ではない所へ行くべきではなかったのです。しかし、今日学ぶルツ記は、不思議にもこの脱線したエリメレクをも、異邦人の救いのために神が用いたことが解かります。
さらに夫に死別した後、ナオミは息子たちに、異邦人であるモアブの女を嫁とすることを許したのでした。当時、イスラエル人にとっては、異邦人は犬同様でした。その異邦の民を嫁に迎えたのです。
そしてこのモアブの女と結婚した二人の息子は、共に死にました。ナオミはどんなに悲しく、また苦しく異教の地で心細かったでことでしょう。彼女自身がこう言っています。

ルツ記1:20
20ナオミは彼女たちに言った。「私をナオミと呼ばないで、マラと呼んでください。全能者が私をひどい苦しみに会わせたのですから。

ナオミは「心良い」、マラは「苦しみ」の意味です。エリメレクの家族は、自分で蒔いた種を刈り取ったのです。ナオミはルツを連れてベツレヘムに帰ります。
この時期、故郷ベツレヘムの飢饉は去り、再び収穫が多くなったと伝え聞き、ナオミは、二人の嫁オルパとルツを連れて、故郷に帰ろうとしました。
次に、ルツに対する主の導きに目を留めてみたいと思います。

■ルツの選択
ルツは、人生の岐路に立った時、神に近づく最善の道を選択しました。
ナオミはそのうち嫁たちに、それぞれ自分の家、母の家に帰ってまた結婚して、それぞれの夫の家で平安に暮らしなさいと言って、別れるように態度を変えたのでした。

ルツ記1:8-9
8そのうちに、ナオミはふたりの嫁に、「あなたがたは、それぞれ自分の母の家へ帰りなさい。あなたがたが、なくなった者たちと私にしてくれたように、主があなたがたに恵みを賜わり、
9あなたがたが、それぞれ夫の家で平和な暮らしができるように主がしてくださいますように。」と言った。そしてふたりに口づけしたので、彼女たちは声をあげて泣いた。

事実、当時の東方世界では、家庭を持っていない女は、保護と尊敬を得られないばかりでなく、全く危険と試練の内に生きなければならなかったのです。
一人のモアブの未亡人が、故郷を離れベツレヘムに行って、安息の地を求めようとしても、それはナオミが二人の嫁に説いたように、不可能なことでした。

ルツ記1:11-13
11しかしナオミは言った。「帰りなさい。娘たち。なぜ私といっしょに行こうとするのですか。あなたがたの夫になるような息子たちが、まだ、私のお腹にいるとでもいうのですか。
12帰りなさい。娘たち。さあ、行きなさい。私は年をとって、もう夫は持てません。たとい私が、自分には望みがあると思って、今晩でも夫を持ち、息子たちを産んだとしても、
13それだから、あなたがたは息子たちの成人するまで待とうというのですか。だから、あなたがたは夫を持たないままでいるというのですか。娘たち。それはいけません。私をひどく苦しませるだけです。主の御手が私に下ったのですから。」

そして二人は声をあげて泣き、オルパは姑に別れの口づけをしましたが、ルツはナオミにすがりついて、どうしてもついて行くと言いました。

ルツ記1:14、16-17
14彼女たちはまた声をあげて泣き、オルパはしゅうとめに別れの口づけをしたが、ルツは彼女にすがりついていた。
16ルツは言った。「あなたを捨て、あなたから別れて帰るように、私にしむけないでください。あなたの行かれる所へ私も行き、あなたの住まれる所に私も住みます。あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です。
17あなたの死なれる所で私は死に、そこに葬られたいのです。もし死によっても私があなたから離れるようなことがあったら、主が幾重にも私を罰してくださるように。」

偶像礼拝の背景から嫁いできたルツは、多分イスラエル人の夫との生活を通して、唯一の真の神であるヤアウェイという方を知ったのです。そして、この神と共に生涯歩み続ける決心を密かにしていたと想像できます。
この決心は、並々ならぬものでした。異邦の地での生活、夫のない生活、姑に仕える生活、どれを取っても不安があったことでしょう。しかし、彼女はこれらのすべてに勝利させてくださる神に信頼を置きました。
神は、その信仰に応えてくださったのです。ルツの御心にそった生活、ルツは姑ナオミを忠実にまた深く愛しました。ルツは謙遜でした。ボアズの畑で、落穂を集める時、律法に定められた未亡人や在留異国人に対する権利を主張することなく、ただひたすら他の貧しい人たちと共に麦を刈り取る人の後について、落穂を集めたのでした。

ルツ記2:7
7彼女は、『どうぞ、刈る人たちのあとについて、束の間で、落ち穂を拾い集めさせてください。』と言い、ここに来て、朝から今まで家で休みもせず、ずっと立ち働いています。」

またルツは、男性関係においても貞節でした。

ルツ記3:10
10すると、ボアズは言った。「娘さん。主があなたを祝福されるように。あなたのあとからの真実は、先の真実にまさっています。あなたは貧しい者でも、富む者でも、若い男たちのあとを追わなかったからです。

■ボアズとの出会い
ベツレヘムに帰ったルツは、畑で落穂を広い集めるために出かけて行きましたが、そのところを聖書はこう言っています。

ルツ記2:3
3ルツは出かけて行って、刈る人たちのあとについて、畑で落ち穂を拾い集めたが、それは、はからずもエリメレクの一族に属するボアズの畑のうちであった。

「はからずも」とありますが、これはルツの計画や計算が働いたのではなく、ここに深い神の摂理の御手が働いていたのです。
ルツは、買戻しの権利があるボアズと出会うのでした。

ルツ記2:20
20ナオミは嫁に言った。「生きている者にも、死んだ者にも、御恵みを惜しまれない主が、その方を祝福されますように。」それから、ナオミは彼女に言った。「その方は私たちの近親者で、しかも買い戻しの権利のある私たちの親類のひとりです。」

次に、ボアズとルツの結婚について見てみたいと思います。
ルツは神に近づき、神はルツに近づき、低くしてボアズとの結婚へ導いてくださいました。その間のボアズのルツに対する態度は、非常に思いやりがあり、また愛に満ちていました。そしてボアズはルツを買い戻して妻としました。

ルツ記3:9-15
9彼は言った。「あなたはだれか。」彼女は答えた。「私はあなたのはしためルツです。あなたのおおいを広げて、このはしためをおおってください。あなたは買い戻しの権利のある親類ですから。」
10すると、ボアズは言った。「娘さん。主があなたを祝福されるように。あなたのあとからの真実は、先の真実にまさっています。あなたは貧しい者でも、富む者でも、若い男たちのあとを追わなかったからです。
11さあ、娘さん。恐れてはいけません。あなたの望むことはみな、してあげましょう。この町の人々はみな、あなたがしっかりした女であることを知っているからです。
12ところで、確かに私は買い戻しの権利のある親類です。しかし、私よりももっと近い買い戻しの権利のある親類がおります。
13今晩はここで過ごしなさい。朝になって、もしその人があなたに親類の役目を果たすなら、けっこうです。その人に親類の役目を果たさせなさい。しかし、もしその人があなたに親類の役目を果たすことを喜ばないなら、私があなたを買い戻します。主は生きておられる。とにかく、朝までおやすみなさい。」
14こうして、彼女は朝まで彼の足のところに寝たが、だれかれの見分けがつかないうちに起き上がった。彼は、「打ち場にこの女の来たことが知られてはならない。」と思ったので、
15「あなたの着ている外套を持って来て、それをしっかりつかんでいなさい。」と言い、彼女がそれをしっかりつかむうちに、大麦六杯を量って、それを彼女に負わせた。こうして彼は町へ行った。

さて、この結婚は買い戻しの権利者、すなわち贖い主の結婚です。
この結婚は単なる出会いによる結婚の意味があるのではなく、買い戻しの権利者であるボアズが、苦難の中にあるナオミとルツを含めて、エレメレクの畑を代価を払って買い戻したところにあります。そしてルツをめとったのです。
それにより、ルツはナオミもボアズも安息を得たのです。ルツとボアズは、大きな祝福を受けて結婚しました。

ルツ記4:11-17
11すると、門にいた人々と長老たちはみな、言った。「私たちは証人です。どうか、主が、あなたの家にはいる女を、イスラエルの家を建てたラケルとレアのふたりのようにされますように。あなたはエフラテで力ある働きをし、ベツレヘムで名をあげなさい。
12また、主がこの若い女を通してあなたに授ける子孫によって、あなたの家が、タマルがユダに産んだペレツの家のようになりますように。」
13こうしてボアズはルツをめとり、彼女は彼の妻となった。彼が彼女のところにはいったとき、主は彼女をみごもらせたので、彼女はひとりの男の子を産んだ。
14女たちはナオミに言った。「イスラエルで、その名が伝えられるよう、きょう、買い戻す者をあなたに与えて、あなたの跡を絶やさなかった主が、ほめたたえられますように。
15その子は、あなたを元気づけ、あなたの老後をみとるでしょう。あなたを愛し、七人の息子にもまさるあなたの嫁が、その子を産んだのですから。」
16ナオミはその子をとり、胸に抱いて、養い育てた。
17近所の女たちは、「ナオミに男の子が生まれた。」と言って、その子に名をつけた。彼女たちは、その名をオベデと呼んだ。オベデはダビデの父エッサイの父である。

当然ボアズも自分のものとなるべき畑と人が帰ってきたのですから、その喜びはひとしおのものであったと想像できます。
これは神の救いの計画につながる高貴な結婚でした。この結婚は、大きな祝福を受け、事実ルツは、救い主イエス・キリストの家系につながるように導かれたのです。
実に高貴で高尚な結婚と言えるのではないでしょうか。

ルツ記4:18-22
18ペレツの家系は次のとおりである。ペレツの子はヘツロン、
19ヘツロンの子はラム、ラムの子はアミナダブ、
20アミナダブの子はナフション、ナフションの子はサルモン、
21サルモンの子はボアズ、ボアズの子はオベデ、
22オベデの子はエッサイ、エッサイの子はダビデである。

もちろんダビデは、イエス様につながる先祖です。このようにして、ルツの生涯を見てきますと、神の救いの計画は、神の道は人の道とは違う方法で成される。それはまた無意味であるような中に、また実に日常的な平凡な人の営みの中で、粛々と進められたことが解かります。
神は、無に等しい異邦人であるモアブの一人の女を使って、神の偉大な救いの計画を進められました。無意味と思われる10年の後、ナオミは真の信仰者となる嫁ルツという、神を信じるすばらしい宝を持ち帰ったのです。人の計画によらず、神ご自身の導きで、神の救いの計画は進みました。
神の御心にそった、平凡な毎日の生活の中で計画は進みました。そして、贖いを通して結婚へと導かれました。このようにして、神はルツを用いて救い主キリストの系図を作り、救いの道を準備していかれました。

さらにこのルツ記は、士師記とサムエル記の間にあって、ちょうどイスラエルに王がなく、めいめい勝手に自分の目に正しいと見える事を行なった時代で、やがてサムエルの時、イスラエルが王を求めた前でした。すなわち、民が王を求めだした時代の出来事です。
神はこの時期に、ルツをご自分の救いの計画の中に用いたのでした。ルツは何と幸いな女であったでしょう。
最後にこの二人、ルツとボアズは何を象徴しているか学んで閉じたいと思います。

聖書は、すべてイエス・キリストを指し示しています。このルツ記のボアズは、イエス様を象徴しています。彼は地主で、また大金持ちでした。彼はルツに気を配り、イエス様があわれんでくださったのと同じでした。
またルツは、私たち異邦人を象徴しています。したがって、このルツ記は、神が異邦人を神の民に召されるのを先触れと知ったんだとも言えましょう。
最初に言いましたように、モアブ人は律法により、イスラエル人の領域から追いやられたのです。しかし、恵みにより受け入れた状況が記されています。神は、イスラエル人だけではなく、私たち日本人を含めたすべての民族の救いを計画されていることが預言されております。

ルツ記は、私たち異邦の罪人がいかに貧しく、いかに神と疎遠であろうと、キリストにある神のいのちを得ることによって、ルツとボアズが結ばれて夫婦になったように、主と一体になるということを現しています。
ルツは、ボアズと結ばれた後に得た安息と祝福は、私たちがイエス様を信じ、一体となった後に得る安息と祝福と同じです。人は、イエス様の足もとに来て初めて安息と祝福を得ることができます。
最後にこのことを3章1節から9節まで読んで終わります。

ルツ記3:1-9
1しゅうとめナオミは彼女に言った。「娘よ。あなたがしあわせになるために、身の落ち着く所を私が捜してあげなければならないのではないでしょうか。
2ところで、あなたが若い女たちといっしょにいた所のあのボアズは、私たちの親戚ではありませんか。ちょうど今夜、あの方は打ち場で大麦をふるい分けようとしています。
3あなたはからだを洗って、油を塗り、晴れ着をまとい、打ち場に下って行きなさい。しかし、あの方の食事が終わるまで、気づかれないようにしなさい。
4あの方が寝るとき、その寝る所を見届けてからはいって行き、その足のところをまくって、そこに寝なさい。あの方はあなたのすべきことを教えてくれましょう。」
5ルツはしゅうとめに言った。「私におっしゃることはみないたします。」
6こうして、彼女は打ち場に下って行って、しゅうとめが命じたすべてのことをした。
7ボアズは飲み食いして、気持ちがよくなると、積み重ねてある麦の端に行って寝た。それで、彼女はこっそり行って、ボアズの足のところをまくって、そこに寝た。
8夜中になって、その人はびっくりして起き直った。なんと、ひとりの女が、自分の足のところに寝ているではないか。
9彼は言った。「あなたはだれか。」彼女は答えた。「私はあなたのはしためルツです。あなたのおおいを広げて、このはしためをおおってください。あなたは買い戻しの権利のある親類ですから。」




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